鳥公園#14「すがれる」2012/2017 インタビュー01
〈作・演出〉西尾佳織 ×〈出演〉武井翔子

聞き手:長谷川皓大(演出助手)

2017年6月13日カフェ コメコ(上石神井)にて

鳥公園#14では、2012年の大阪版「すがれる」と、

新たに立ち上げたリ・クリエイション版「すがれる」を上演します。

2012年に大阪・北九州・横浜で上演、3都市を巡る中で変化し続けた「すがれる」。

作・演出の西尾佳織 ・ 2012年の「すがれる」にも出演した俳優の武井翔子、

2012年/2017年それぞれの「すがれる」と5年間の自身の変化について、鳥公園の2人に聞きました。

 

テーマは“老い”

 

―― 2012年の初演から5年たち、今「すがれる」を再演しようと思ったきっかけを教えてください。

 

西尾 今回の公演のことを考えたとき、何か新作じゃないものをやりたいと思ったんです。2015年の「緑子の部屋」で、初めて再演ということにしっかり取り組んで、これからも取り組みたいなと思っていました。今回、特に「すがれる」という作品を選んだのは扱っているテーマが“老い”だったからです。初演では、まだ自分は老いていないという気持ちで〈まだ老いていない者〉が〈すでに老いている者〉を見るみたいな関係で捉えていたんです。でも5年たってみると、別に老いたことがある人がいるわけじゃなくて、確定した老いがあるわけでもなくて、「みんなずーっと老い続けているんだなぁ~」と思うようになりました。2012年と今を比べると、自分の中にも老いを見つけるようになったので、当時と違う扱い方で2012年の「すがれる」と同じテーマをやってみたいと思って選びました。

「ヨブ呼んでるよ」 2017年 / こまばアゴラ劇場 / 撮影:中才知弥(Studio Cheer) 写真中央が武井さん

―― 武井さんの鳥公園初参加は、2012年の「すがれる」横浜版だったそうですね。この5年間で鳥公園の作品に参加することについて、何か変化はありましたか。

 

武井 鳥公園の、ってことに関しては特に……ないかな。自分自身のことについては、25歳から30歳になるにあたって、いろんなことで変わったとは思います。老いということにスポットを当てたら確実に老いています。酒が抜けねえな、とか(笑)身体的にもそうだし、自分が5年前とあまり変わらない生活をしていても、周りの同年代の人たちは何かしら人生の転機を迎えているので、そういう意味で「老いたな」というか「齢だな」みたいなことは感じます(笑)

『ヤジルシ』と『野蛮な読書』

 

―― 「すがれる」は様々なテクストをコラージュし構成された作品ですが、どのような経緯でその作り方に至ったのですか。

 

西尾 いろんな引用元から作られている太田省吾さん作の戯曲『ヤジルシ』が考えるもとになっています。この戯曲は鳥公園で昨年、上演しました。それまでは、作品を形にすることをどうしたら集団創作にできるんだろうかと感じていたんです。人と作りたいのだけどどうしても“作家の世界観”みたいなことで、なんとなく一個の作品にまとめることしかできていなかった。もうちょっと人が作品に入って来るとか、一個の世界を立ち上げるという行程をわたし自身は手放して、その少し空いたスペースに人が関わって違う編まれ方になるには……? ということに悶々としていました。そういう中で太田さんの戯曲と、もう1つ平松洋子さんの『野蛮な読書』っていうエッセイが頭にありました。このエッセイでは、平松さんが読んだいろんな本と、平松さんが生きている生活の時間がはぎ合わされるんですが、その手付きを平松さんは「野蛮な」と呼んでいます。そういう風に自分たちの中も通るし、この創作の現場にはいない他の人の言葉も両方はぎ合わせながら、劇の時間が作れたらいいなと思いました。初演の時はどう成り立っていったっけ?

 

武井 あまり覚えてないけど、そんなに「今回はこのやり方なんだ!」とか思うよりは……。私自身、見たことも聞いたことも無いまま「すがれる」のオーディション受けて、鳥公園が初めてで何も知らなかったんです。

 

西尾 なんでオーディション受けたの?

 

武井 フェスティバル/トーキョー(以下、F/T)に興味があったから。2011年に鳥公園がF/T公募プログラムに参加してる経歴を見たんだよね。

 

西尾 んー。

 

武井 その時は「F/Tかあ。」ってだけの動機だったから、作り方に抵抗とか不思議な感覚はなかった気がしますね。2012年は出演者4人とも同学年で、いろいろ大変なこともあったと思うけどみんなでわいわい作りました、みたいな記憶しかないです。

―― 今回も出演者の年齢層は近いですね。

 

武井 でも初演とは全然稽古場の感じは違いますね。「同年代の人たちと肌感覚で作ってるなー」って感じは初演の時の方があった。今回は座組と、扱っているもの、テキストの間にもっと距離があると感じています。

 

西尾 初演のときは「ノリ」が強かったよね。良くも悪くもだったと思うけど“その場の”ことばかりで作っている感じでした。

 

武井 そんなに、“その場の”っていうほどだった? エチュードとかやってたわけでもないし。でも、引用テキストも「ノリ」で選んでいた感じで、書かれるものも割とあて書きというか、この人にこんなこと喋らせたらどうなるだろう……みたいな感じでしたね。若林さん(※2012年「すがれる」横浜版に出演していた女性ダンサー)がおじいさん役ということだけは、もともと決まっていたから、それ以外は割と「ノリ」だったというか……、ノリも大事だけどね。何故ここにこれが来るのかわからないけど、しっくりくるものを意識して作っていたから、意外とすんなりやっていました。

 

 

―― 稽古場を見たりお話を伺ったりしていると、2012年と今回では稽古場の雰囲気に違いが多いという印象を受けます。

 

武井 初演の時は、結構初めからシーンが立ち上がっていました。これはどうやるんだろうと思うシーンより、普通の会話のシーンも多かったんですよね。

 

西尾 初演と今回と違うのは、初演時はとにかく会話に取り組んでいた点です。初演時は、現代の人たちが現代の若者言葉で喋ること以外をしようという気持ちがそんなになくて。今回はそこに大きな違いがあるのかな。今は通常の自分たちに近い状態で喋ることに、そんなに興味を持てなくなっていて……

 

武井 私は興味を持ってるけどね。若者言葉で喋るかどうかとか、そういう問題じゃない気もしているんですよね。でも西尾さんが今、興味を持てないならしょうがないけど(笑)

 

―― 今回の上演は2012年の大阪版と新たに立ち上げたリ・クリエイション版の同時上演ですね。今回の上演内容について詳しく教えてください。

 

西尾 2012年の大阪版は当時の戯曲をそのまま再演するつもりです。リ・クリエイション版、つまり2017年版は“今の老い”というものについて作品にしています。両方並べて同時に見てもらうことによって、同じテーマでも、考え方、捉え方やアプローチが変化する部分を見てもらえたらいいなと思っています。

「すがれる」 2012年 / BankART Studio NYK(横浜) / 撮影:塚田史子

 

2012年と2017年、5都市で上演される「すがれる」

 

―― 2012年は大阪・北九州・横浜で上演、そして今回は東京・京都での上演ということで、結果的に5都市での上演ということになるんですね。

 

武井 結果的に(笑)そうだね、そういう捉え方がありますね。

 

西尾 確かにね(笑)

 

武井 私は2012年は横浜公演しか出演していなかったから、5都市って思い浮かばなかった。

 

西尾 5都市ってあんまり思ってなかったけど確かにそうだね。

 

 

――“5都市”ということですが、2012年と今回はあえて別の場所を選んだのですか。

 

西尾 上演する都市について、今回は「この作品だから東京と京都で」と考えたわけではないんですよね。でも、2012年は場所から作るという気持ちが大きかったです。当時は先に場所から決まって「じゃあどういう風にやろう」と「すがれる」を作りましたが、今回は既にある「すがれる」という形のものをどこでやるか、という順番でした。初演は場所によって上演時間も違ったし条件自体がまるまる違ったから、おんなじテーマで作り続けたけれど、内容や形がすごく違う3本になったんです。でも今回は場所によって変えることはせずに、これが「すがれる」ですと言える作品を2つの都市でやる意識です。

 

武井 今回は単純にどちらの会場も劇場だし。2012年は3都市で空間が違い過ぎましたよね。

 

西尾 うん。全部個性豊かな会場でした。鳥公園の作品は劇場以外で上演することが多かったのですが、最近は劇場での上演が増えてきたように思います。演出でいろんなことを伝える力が今よりもっと足りなかった初期の頃は、劇場ではない空間で、すごく強い制限からスタートすることが必要だったんですよね。制限のある空間だと「あ、こういう場所なんだな」っていうのがその空間に入った人に先に分かってもらえる。場所から作ることに興味が無くなったわけではないし、今はそれはそれで面白いと思っていますが。でも、そうじゃなくて劇場で俳優から立ち上げることに挑戦していきたい気持ちが強まっています。武井さん的にはどうなの? 横尾邸での上演とかあったよね。

 

武井 横尾邸、造船所、デパート、商店街、棚田と劇場以外の場所でもいろいろやったけど、どっちもそれぞれの面白さと大変さがあったと思います。でも、劇場の方が俳優として大変だとか、逆に劇場以外の方が大変だとか思ったことはないですね。私は劇場以外の場所も割と好きですね。なんていうか、自分が楽しいから(笑)本番もだけど、過程も含めて、劇場には劇場の楽しさがあるけど、私は劇場以外の場所が好きですね。劇場にも様々な場所があって、良い悪いがありますしね。

 

「一緒に楽しめたら」

 

―― 最後に、#14「すがれる」2012/2017をご覧になるお客さんに向けてお願いします。

 

西尾 いつでも最大限わかりやすく作っているつもりなんですが、「難しい」「分かりにくい」とご意見いただくことがあります。でも今、そういうところで弾かれないところまでもっとちゃんと頑張っていかないと、なー。って気持ちになっています。特に、わたし達より年代が上の人が見て面白いと思えるものにしたいと思っています。

 

武井 どういう芝居でどこを見てほしいっていうのも、まだ全然言えません。本番の舞台でお客さんが客席に入ったときに、一緒に「こういう芝居なんだ」と楽しめたらいいなと思います。

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